例えば、その場所の感覚受容器からの情報が末梢神経を伝わって、対側の脊髄を上って、視床を通って、一次体性感覚野に到達する事で
痛みが発生する…と昔は思われていたんですが、ところがそんなに単純ではないのが痛みという反応だったりします。
この説明だと、感覚受容器からの情報の入力こそが「痛みの要因」のように聞こえますが、幻肢痛(切断などで足が無いにも関わらず、無いはずの足が痛むなど)の痛みや、痛みの原因だと考えられていたものが排除された後の痛み(ヘルニアの髄核などを取り去ってもなお痛む、組織損傷が修復されているはずなのになお痛む)の説明ができませんし、中枢神経で起こることや心理的な部分からの条件が加味されていません。そういった指摘を1965年にメルザックさんとウォールさんという人が既にしていました。60年近くも昔に。
とにかく、最近は少なくとも「痛い」という反応は怪我をしてなくても感じるかも知れないし、膝が変形していようがしていまいが痛むかも知れないし、たとえ組織に何の異常も見つからなくても痛むかも知れないことが周知されつつあります。
以前、変形性膝関節症の診断を受けた方に来ていただいていました。病院に行くとすぐに手術を勧められたそうなのですが、2回目の時点で患者さんの自己管理が良かった甲斐もあってほぼ痛みが無くなって、病院でも「痛くないんやったら、手術せんでも…様子見ましょうか」となって、週末にシーズン最後のボードにまで行ってきたんだそうです…。
このお話は何も手術が必要ないとか、手術を否定するお話でも無ければ、私の腕前が特別素晴らしいとか、そんな話ではなく「痛みは組織から作られている訳ではなく、脳で作られる反応」「様々な要素が多次元的に絡んでいる問題」と視点を変えると、私達も患者さんも他にも何かできる事がありそうだな…!と今よりポジティブな面を考える事ができるものじゃないかな、というお話でした。それにしても身体の治癒力(痛みの修正能力)って本当に凄いですよね…!